子育ての秘訣

この人に聞く 連載第六回

人生の先輩の考える子育てとは

高崎利子 氏
高崎利子 氏

食育について

Q.食育に関して、子どもの食べ物に対してポリシー等をお持ちでしょうか?

今日が丁度秋分の日なので朝から「おはぎ」作りに勤しんでいました。これは、今は亡き私の父から受け継いだ習慣で、始めてからかれこれ30年になります。

私の小さい頃は、今のように食べ物が溢れている世の中ではなく、季節の行事に外で買って来た食べ物が幅を利かせていたと云えば、クリスマスケーキくらいのもの。おせち料理、七草粥、ひな祭りのちらし寿司、お彼岸のぼたもち・おはぎ等は各家庭で用意するものでした。

子どもができてから今まで、これらの季節行事にまつわる料理は、欠かさぬよう守ってきました。私に取っては努力して続けていると云うより、しないと気持ちが悪いたぐいの行為です。料理だけでなく、節分の豆まきをしたり、菖蒲湯に入ったり、柚子湯に入ったり、といったことも欠かせない習慣です

食育について何故続けて来たかと云えば、自分自身日本人としての文化を捨てたくなかったし、それを我が子に伝えるのが大人としての責任だと感じたからだと思います。

食の伝統を守ることは、子どもにとって、日本人としてのアイデンティティー確立にも欠かせないものという想いがあったからです。

かと云って、今娘達が各々の家庭でこれらの習慣を継承しているかといったら、残念ながらまだ私任せで行事ごとに御馳走になりに来るという甘えぶりです。でも彼女達もこれらの習慣を無視して通り越すのは気持ちが悪いようです。

昨今では、季節の行事と云えば、自国の文化の継承より「バレンタインデー」のチョコレート作りや、ハロウィンのパーティー等発祥の地の由来に関係なく、形をまねて楽しむ事が流行っているようですね。

行事の料理に限らず、子どもに取って暖かい手作りの料理と云うのは、物理的な身体への栄養補給に留まらず、親の手厚い保護を感じる心の栄養なのだと思います。どんなに叱られても、親が心を込めておいしいものを食べさせたいと作った食事に触れれば、子どもは拗ねていた気持ちをやわらげます

近年、超難関私立女子中学の入試問題に「食育」に関連した話が出たそうです。それを知った受験生のお母さんは、「しっかりとした家庭で育った子ども、そうした家庭に養われて育った豊かな人格を持った生徒をこの学校は欲しているのだ」と感じたそうです。

そして、「食」、単に食べ物と云うことでなくそこにまつわる諸々の行為や想いは、急に取ってつけたようにはできません。また、親が本当に大切だと心から感じなければ用を成しません。

小学校受験の為に、テキストで季節の行事を覚えさせるのではなく、親が日頃実際に心を込めて行事を行っていけば、子どもの心にはそれが深く植え付けられていくのだと思います。(次回へつづく)

鼠(2010/10/15)

生年

昭和26年生まれ

出身地

東京都

略歴

小学校から高校までを、お茶の水女子大学附属で学ぶ
美大を経て、新卒で私立小学校の美術教師を経験
結婚を機にアメリカ(スタンフォード・ハーバード)に
5年間生活
帰国後、昭和61年に幼児教室パル・クリエイション設立
今年で25年目
娘二人、それぞれの娘に男女の孫が一人ずつ
平成19年より、お茶の水女子大学附属高等学校同窓会
「作楽会」の会長職

太平洋製糖社長 山下裕司氏   高崎利子氏(2)

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