子育ての秘訣

親の力向上委員会

こどもの生きる力を伸ばすために

連載5 しつけの基本は見本を示すこと

東京目白にある川村小学校の若林雅子副校長先生に、子どもの「しつけ」についてお話頂きました。

若林雅子 氏
若林雅子 氏

自分の役割を果たせる子どもに

しつけの語源は、着物を縫うときの「しつけ糸」のしつけから来ていると聴いたことがあります。言葉のニュアンスはあまりよくありませんが、「型にはめる」ということです。

もちろん一律に型にはめるというようなことではなく、良い、美しい型にはめるということです。型にはめるとは、広い意味において、強制するということです。何かを口で押し付ける、ということではありません。子どもにして欲しいと願うことは、親がまず見本を示しながら子どもの様子や変化を見ながら、ほめてあげるということがなければ育ちません。

例えば、玄関先に脱ぎ散らかされている靴を見て叱っても、さほど役には立たず、子どもが靴をそろえようとしている姿を見逃さずに、ほめてあげることが大事です。このとき玄関が家族の靴で乱雑になっていては,子どもにそろえようという心が起こるはずがありません。きちんと家族の靴がそろえられている玄関だからこそ、子どももそうしようとする心が起こります。それが見本であり、ほめてしつけるということです。

取り組む課題は、たくさんは必要ありません。むしろ、数少ない何かを、継続して取り組む。完全にできる何かを獲得していくことが、他の課題へも進んで取り組むという姿勢をはぐくんでくれるものです。

しつけの語源のもうひとつは、「し続ける」ことにあるともいわれています。それは、子どもがし続ける事でもありますが、親がし続けることでもあります。見る、認める、ほめる、はげます、その行為は、誰にでもできることですが、それをできるまでし続けるのは、親としての忍耐が必要です。その忍耐を支えてくれるものは、親としての強い心構えと、そして愛情だと思います。

生活習慣の1つは,「身体に関するしつけ」です。人間性の根幹をなしているものが体であると同様に、しつけの基本も、体へのしつけが基本になります。

今の若いお父さん、お母さんに子育てへの提言

食についてのしつけ

子どもたちには、それぞれ好き嫌いたくさんあると思います。そして、食べられる分量もみんな違います。では、どうすれば、食べられるようになるのかというと、まず、千差万別なそれぞれの子どもの適量を知ることが大切です。食べる分量には、どの子にも適量があります。それを考えずに、よその子はたくさん食べるのにうちの子は食べないと不安に思うことはありません。たとえ、少ないと思われても、十分に活動できている様子であれば、それで、十分なのです。

次に栄養のバランスということがあります。もちろん、多様な栄養素を、バランスよく食品から摂取することは、大切なことに違いありませんが、そのことにこだわりすぎてお母さんがあまり負担に感じるようでは困ります。

好き嫌いは誰にでもあります。でも、肉がだめなら魚、魚もだめなら大豆と同じ栄養素がふくまれている食品は、たくさんありますので、必要以上にこだわることはないのです。むしろ、お母さんの心のゆとりがあれば、だんだん好き嫌いをなくす方向に向かわせることもできるでしょう。

ただ、食わず嫌いになることは避けたいのです。たとえ一切れでもかまわない、ほんのちょっと、舐めただけでもかまわない。そういう心持ちで、どんな食品にも接するという機会を与えてあげてください。

それは、体への心配というよりも、食わず嫌いにしてしまうことで、精神的な偏りを生んでしまうことが恐いのです。食の習慣は二度、三度のことだから、より人格に定着すると主張する人がいますが、確かに好き嫌いの多い子は、人や活動に対する好き嫌いが多いというのは事実であろうと思います。最初に食わず嫌いにだけはさせないという心配りがほしいのです。だから、一切れでも口にする。そのことをお母さんが喜んでくれることが、次の一口を導いてくれるにちがいありません。

好き嫌いは、だめとばかりに無理強いすることは、お母さんにも、子どもにも、余計なストレスを与えてしまいます。食事という、生命を維持するために欠かせない、そして、子どもにとってたいへん重要なこの時期の発達に欠かせない、その、日々の営みが、苦痛に満ちたくり返しになることは、とにかく避けたいものです。

まずは、食べさせようという構えを捨てて、お母さんが目の前で何でもおいしそうに食べることです。子どもにとっての「学ぶ」ことは、すべて「真似ぶ」ということなのです。自らの姿を常に子どもの前にみせることが前提となるものでしょう。

食事の好き嫌いに関して、逆に子どもが好きだからといって、そればかりを食べさせるというのも望ましいとはいえません。甘いものが好きだから甘いものばかり、塩辛いものが好きでそればかりという食生活はよくありません。糖分も塩分も必要な栄養素ですが、摂り過ぎは体によくありません。

次回も引き続き具体的なしつけについて考えます。(連載6へ続く)

鼠(2010/4/15)

子どもの成長に欠かせないお手伝い   しつけは親子の信頼関係から

経歴

川村学園女子大学卒業後、川村小学校で長年、教鞭を取られる。
現在、川村学園川村小学校 副校長

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